海外進出するならどの国か|カンボジアを他国と比較して見える進出判断の軸【2026】

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カンボジア進出は「あり」か。経済規模ならベトナム、節税だけならシンガポール。それでもカンボジアには米ドル運用・金融インフラ・外資規制の少なさという強みがある。17年現地で事業を営む公認会計士が、他国と比べた進出の判断軸を整理する。

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海外進出するならどの国か|カンボジアを他国と比較して見える進出判断の軸【2026】

2026年、イオンモール プノンペンに出店していた家電のノジマが、カンボジアから撤退した。ノジマにとって初の海外店舗だったはずだ。出てくる会社もあれば、引いていく会社もある。これがカンボジア市場の実態である。

では、これから海外に出るとして、どの国を選ぶべきか。結論から言えば、カンボジア進出が「あり」かどうかは、何をやりたいかで答えが変わる。経済の規模や成長スピードで選ぶならベトナム、純粋な節税だけならシンガポールやカリブのタックスヘイブンに分がある。それでもカンボジアには、米ドルでの運用、使い勝手のよい金融インフラ、外資規制の少なさという、他国にはない強みがある。海外進出の国選びで迷っている人ほど、この比較の軸が効いてくる。

進出している日系企業の顔ぶれ、円安時代に海外へ出るデメリット、会社を作りやすい国の比較、ベトナムとの2026年時点での違い、オフショアと資産保全先としての位置づけ、そして海外進出する事業化にとって常に関心の的といえる節税効果の現実までを順に扱う。


進出する会社も撤退する会社もある|カンボジアの日系大手企業

カンボジアに進出している日本企業で、一番に思い浮かぶのはイオンだ。2014年6月に1号店がオープンし、いまは3号店まで広がった。3号店は東南アジアで最大規模のイオンモールである。プノンペンに住む邦人だけでなく、カンボジアの中間富裕層の生活の質を、がらりと変えたと言われている。

長くこの国にいる日本人の間では、いまだに「イオン前・イオン後」という言い方が残っている。2014年を境に街の何かが変わった、という肌感覚だ。1号店から数えてもう12年。イオンがなかった頃を知る人が、最近は少なくなってきた。

そのイオンモールに1号店から出店していた家電大手のノジマが、冒頭で触れた通り2026年2月に撤退した。ノジマにとっては初の海外店舗だったはずだが、2026年に事業を終えてカンボジアから退いた。残念な話ではある。だが、これもまたカンボジアの現実だ。

消費者から見えるBtoCの有名企業とは別に、企業間取引で大規模に進出している筆頭が、ミネベアミツミだ。精密機械の中で回転をスムーズにする軸受(ベアリング)の世界最大手で、合併前のミネベアだった2011年頃、小型モーター事業で経済特区に進出してきた。

このとき、カンボジア政府が異例の特権を与えた。小型モーターについて5年間の製造独占、つまり「この5年は競合を入れない」という特約だ。これに怒ったのが、モーターで知られる日本電産(現ニデック)である。当時カリスマ経営者として知られた永守氏がこの特権に異論を伝えるためカンボジアまで乗り込んできたほど話題になった進出だった。


メガバンクと総合商社が見ているカンボジア|投資の動きと有名人

メガバンクは「投資」の形でカンボジアに入っている

日本の大手金融機関も、積極的にカンボジアに出てきている。多くは支店の出店ではなく、現地銀行への投資という形だ。

以前の動画でも紹介したアクレダ銀行(ACLEDA)は、しばらく前まで国内最大手で、いまはABA銀行に抜かれてトップ2の位置にいる。そのアクレダの株主に、三井住友銀行が約18%、オリックスが約12%で入っている(出典元:ACLEDA Bankの株主構成)。両社合わせて約1/3の議決権を握っている計算だ。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、もっと踏み込んでいる。傘下のタイ・アユタヤ銀行を通じて、カンボジアのハッタバンクを完全子会社として保有している。
SBIも現地の商業銀行に出資し、証券会社も経営している。みずほは三井住友やMUFGのような派手な投資こそしていないが、支店ライセンスを持って活動している。大手金融機関は、それぞれの形でこの国に根を張っている。

総合商社、出るところもあれば引くところも

総合商社では、三井物産の動きが目立つ。マレーシア系の通信キャリアSmartに、まず2017年に約74億円で10%を取得し、翌2018年にはさらに約100億円を投じて持分を20%まで引き上げ、社員も送り込んでいる。かなり本気の投資だ。

その一方で、本稿執筆時点ではまだ公表されていないが、別の大手総合商社は2026年3月にカンボジアからすでに撤退している。 出てくる会社もあれば、引いていく会社もある。日系大手の動きは、この一言に尽きる。

進出した有名人

有名人で一番知られているのは、タレントの猫ひろしさんだろう。カンボジア国籍を取得しており、あれだけ大々的に公表されている以上、いまは日本国籍を喪失しているはずだ。マラソンが速く、2016年のリオデジャネイロ五輪にはカンボジア代表として出場している。

もう一人、本田圭佑さんも一時期カンボジア代表チームのジェネラルマネージャー、実質的な監督を務めていた。シェムリアップ州のサッカークラブを保有し、スタートアップ投資も手がけていたが、代表GMも所有クラブも2023年頃にすべて手放し、カンボジアからは引いたと聞いている。


円安時代に海外移住・進出するデメリットは何か

日本人がカンボジアに移住する場合、「カンボジアだから」という固有のデメリットは、正直あまり思い浮かばない。これはカンボジアでもベトナムでもシンガポールでも同じで、それぞれに事情がある。むしろ海外に住んでみると、インフラも食事も整った日本のありがたさを改めて噛みしめる。海外移住の最大のデメリットは、皮肉にもそこかもしれない。

ただ、最近はっきりしているデメリットが一つある。通貨だ。私がカンボジアに進出した頃は円が非常に高かった。日本円で収益を得たり投資を受けたりしていれば、それで東南アジアを動き回るのは極めて楽だった。

それがいまは150円台が当たり前になった。

1ドル100円なら、月給40万円は4,000ドルになる。だが1ドル150円になると、同じ40万円が2,660ドルにしかならない。

円ベースの収益や円資産を持っている人ほど、この目減りが効いてくる。海外で暮らすと、懐が寂しくなる。円安時代に海外へ出ることの、これが一番のデメリットだ。


海外で会社を作りやすい国はどこか|カンボジアの外資規制

カンボジアにこだわらず、東南アジアの枠も外して「とにかくパッと会社を作れる国はどこか」だけで言えば、答えはエストニアだろう。バルト三国の一番北、フィンランド寄りの国だ。世界のどこにいてもオンラインで会社を作れる仕組みを国として整え、ノマド的な働き手を集めようとしている。私自身はやったことがないが、数時間で設立できると言われている。同じ文脈では、旧グルジアのジョージアも低いハードルで設立できるようにして、IT系のワーカーを引き寄せようとしている。

東南アジアに絞り、会社設立のスムーズさだけで言えばシンガポールだ。制度がよく整っていて設立は簡単だが、居住している取締役が必要で、コストも高い。システム上の申請はシンプルでも、要件を満たすのが意外と難しいことがある。

ではカンボジアはどうか。制度の見た目では、シンガポールやエストニアのように完全オンラインで完結とはいかない。設立に1ヶ月ほどかかり、役人対応も発生する。アナログな面倒くささは、正直ある。

ただし、実際の使いやすさは制度の見た目とは別のところにある。カンボジアは外国資本に対する業種規制がほぼない。エネルギー関連やカジノなどは別だが、一般的な事業であれば、かなり幅広い範囲で100%外資のまま現地に会社を作れる。タイやベトナムでは、業種によって資本規制があり、議決権の過半数を現地のローカル側が握らなければならないケースがある。カンボジアにはそれがない。設立手続きの近代化は遅れていても、外資規制の少なさという一点で、実務上はやりやすい国だと私は見ている。


ベトナムとカンボジア、2026年はどちらに進出すべきか

2026年に入ってまだ間もないが、ベトナムとカンボジアのどちらが有利か。当たり障りのない回答で恐縮だが、これは何をやりたいかによる。

経済成長のスピード、規模、厚みで言えば、カンボジアはベトナムに圧倒的に及ばない。人口がそもそも違う。カンボジアは1,600万人ほどだが、ベトナムは1億人を超えている。ベトナムは北の首都ハノイ、南の商業都市ホーチミンと厚みがあり、ホーチミン圏だけで人口は東京圏並みにいるはずだ。国内需要を取り込んで商売をするなら、カンボジアはベトナムには敵わない。

その代わり、ベトナムにはベトナムドンという現地通貨がついて回る。ベトナムドンで商売をすれば、その資金をどう持ち帰るか、通貨が安くなったらどうするか、という新興国特有のローカルカレンシーリスク(現地通貨リスク)を背負い込む。

カンボジアはその裏返しだ。国内市場で成長している分野に張ろうとしても、国が小さいうえ、金融不況や不動産バブルの崩壊といった問題も起きている。市場としての魅力はベトナムに見劣りする。その一方で、金融インフラは外国人にとって相当に使い勝手のよい方向で整っていて、米ドルでさまざまなことができる。通貨や金融資産の視点で何かをやろうと思えば、カンボジアの方にメリットがある。これが体感ベースでの、現時点の両国比較だ。カンボジア経済の全体像についてはカンボジアの銀行業界の実態でも整理している。


オフショア・資産保全先として見るカンボジアの実力

オフショアとは何か。ショアはseashoreのショアで「岸」、オフショアは岸から離れた沖合のことだ。そこから転じて、自分の居住国ではない外国で何かをすることをオフショアと呼ぶ。代表的なのは金融とビジネスの二つで、エネルギーの世界では洋上風力をオフショアと呼ぶこともある。

金融面とビジネス面のオフショアで見れば、カンボジアの利用価値は高い。

金融オフショアとして見ると、日本からこの距離で、外国人がこれほど簡単に米ドル建ての資産を持って維持できる国は、東南アジアでも珍しい。金融インフラが「緩さ」という意味で秀逸で、比較的自由度が高い。米ドルで資産を保有したい人にとって、カンボジアの金融オフショアとしての価値は小さくない。

ビジネスオフショアとしても実例がある。前述のミネベアミツミは、低コストでものを作れるからこの国に工場を置いている。電子部品に限らず、縫製業のように機械で一気にやるより人が縫った方がよいもの、自動車のワイヤーハーネスのように手作業の配線が多いものは、人手のかかる工程が得意なこの国に向いている。IT系でも、たとえばコンピューターグラフィック制作のうち比較的シンプルな工程は、日本人の給料では割に合わない。そこをカンボジアで現地スタッフを教育して任せる。弊社が支援している顧客にも、こうした理由で進出している会社が多い。

では、資産の保全先として安全かと言われると、話は変わる。この動画は日本人向けなので、日本を基準に考える。日本は安全な国で、預金保護のペイオフ制度もある。その低リスクと比べてしまえば、カンボジアが資産保全先として安全とは言えない。一定のリスクを覚悟したうえで、カンボジアで何かをするという形になる。

ただ、カントリーリスクという角度で東南アジアに絞ると、見え方は少し変わる。ここからは私見も入るが、国としての政治的な安定度で言えば、東南アジアではシンガポールとカンボジアが筆頭だと私は思っている。自分の経営判断や投資判断とは無関係に、突然テロやクーデターが起きる、社会主義の国が方針を覆す、といった「ちゃぶ台返し」が起こる可能性が極めて低い、という意味だ。

たとえばタイは、最近カンボジアとの国境紛争で話題になった。あの紛争も、私見だがタイの内政問題に端を発している。王室・貴族・軍とタクシン派の対立が根深く、選挙で勝てば軍がクーデターを起こす。2000年代に入ってからも2回、クーデターが成功している国だ。この構図の詳細はタイ・カンボジア紛争の本質を解説した記事にまとめている。ベトナムやラオスは良い国だが共産主義国であり、トップが一気に変われば、いきなりルールが変わりうる。そのスピードに、ほとんどの民間企業は耐えられない。マレーシアはイスラムの国で、文化の面で我々にとって分かりにくい部分もある。多少の贔屓は入っているかもしれないが、カンボジアのカントリーリスクは極めて低い、というのが私の所感だ。

米ドル建ての預金は、日本国内で預けても元々ペイオフの対象外である。であれば、カンボジアで預けてもペイオフ対象外という点は同じで、カントリーリスクを除けば同じレイヤーで捉えられる。国内最大手のABA銀行が資産・預金・融資・収益でカンボジアトップの座を保っている点も、預け先を考えるうえでの一つの材料になる(出典元:ABA Bankの受賞発表)。


節税目的だけのカンボジア進出はおすすめしない

最後に、節税目的でのカンボジア進出について。これは別の動画でも繰り返し触れてきたが、端的に言えば、節税だけが目的でカンボジアに来るのはおすすめできない。

「税率が安い」と聞いて来てみたら、実際には高くついたと感じる人が多い。純粋な節税だけを狙うなら、シンガポールや、カリブ海の島々に代表されるタックスヘイブンの方が有利だ。そうした国や地域は、低税率そのものを誘致施策にしているのだから当然である。表面の法人税率は20%でも、利益を日本へ配当で戻す段階の源泉税まで含めると、実効税率は約31%まで上がる。詳しくはカンボジアの実効税率の実態を扱った記事で解説している。

ただし、東南アジアで事業をやりたい、投資をしたい、米ドルで動きたい、といった別の目的があってカンボジアで始めるのなら、話は変わる。その前提のうえで、いかに税務コストを低く抑えて自分のやりたいことをやるか、という意味では、賢いやり方や有利なやり方はいくつもある。私のように長くやっていると、体験ベースでそれが見えてくる。節税を入口にするのではなく、事業の結果として税務コストを下げる。カンボジアなら、それは十分に可能だ。


まとめ|進出先は「何をやりたいか」で決まる

カンボジア進出が「あり」かどうかに、万人向けの正解はない。判断は、自社が何を最優先にするかで分かれる。経済の規模と成長の厚みを取るならベトナム、純粋な税負担の軽さだけを取るならシンガポールやタックスヘイブン。これに対してカンボジアが強いのは、米ドルでの資産運用、使い勝手のよい金融インフラ、外資規制の少なさ、そして政治的な安定度という四つだ。この四つを重視する事業や投資なら、カンボジアは有力な選択肢になる。

進出する会社もあれば、撤退する会社もある。流行や噂で決めるのではなく、自社が何をやりたいかという軸で国を選ぶ。それが結局、進出判断でいちばん外しにくい。銀行や金融環境の使い方、税制の現実、経済の全体像については、それぞれ個別の記事で詳しく整理している。あわせて読めば、判断の解像度はさらに上がるはずだ。


※本記事はYouTube動画の内容をもとに、髙虎男本人が加筆・編集したものです。
※出資比率・投資額・人口・為替レート等の数値は収録時点(2026年3月)のものであり、最新の状況とは異なる場合があります。投資・預金に関する判断はご自身の責任で行ってください。
※他国(タイ・ベトナム・ラオス・シンガポール・マレーシア等)の政治・制度に関する記述は、カンボジアに在住する外国人の視点からの分析であり、各国内の見方とは異なる場合があります。

他国と比べたうえで、自社はどの国を選ぶべきか

進出先を比較する軸は、経済規模・通貨・金融インフラ・外資規制・カントリーリスクに整理できる。カンボジアが強いのはこのうち後ろの三つだ。

ただし、どの国が最適かは、自社が何をやりたいかで変わる。同じ「カンボジア進出」でも、事業内容・規模・資金の置き方によって、向き不向きも税負担もまったく違ってくる。

弊社は、カンボジアで17年事業を営んできた立場から、進出目的の整理と、それに対してカンボジアが本当に合うのかどうかの見極めを、初回60分の相談でお手伝いしている。他国と迷っている段階のご相談も歓迎する。

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本記事は、カンボジアビジネスサポート(CBS)チャンネルで配信されたインタビュー動画の内容をもとに構成しています。
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髙 虎男
2008年カンボジア企業 / 公認会計士
アドバイスだけの専門家ではありません。カンボジアで17年間、自分の資金で事業を立ち上げ、従業員を雇い、行政の理不尽とも戦ってきました。その全経験をもとに、日系企業の進出を支援しています。
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