カンボジア事業進出した日本人が「やられがちな”詐欺の手口”」5パターン_実例ベースで徹底解説!

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この記事のポイント

カンボジアに限らず海外でビジネスを行う日本人が遭う「詐欺的行為」の多くはいわゆる刑法上の犯罪にあたらないケースが多い。契約書は整っていて、事前の合意もある、ビジネス的な体裁は全て整っている。 それでも被害を受けた側から見れば、「詐欺に騙された」と体感することに変わりはない。
カンボジア現地で17年事業を継続してきた中で、筆者が見聞きし、また自身が被害を受けた当事者にもなった事例から、これから海外で事業や投資を始めようとする日本人が注意すべき「詐欺的行為」の類型を整理した。

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本稿執筆時点(2026年9月)の日本での報道で語られる「カンボジア」といえば、ほぼ「特殊詐欺集団の巣窟」という扱いであり、そのイメージがすっかり定着してしまった感がある。カンボジアだけではなく東南アジアを中心とした幅広い国々を拠点にした特殊詐欺犯罪グループが、日本だけではなく世界各国の人々に対して電話やSNSを通して詐欺犯罪を行っている。 これらの行為は法令により刑事罰が定められている犯罪そのものである。

ただ、カンボジアへの事業進出を考えている人が本当に警戒すべきなのはこれらのいわゆる詐欺犯罪ではない。事業や投資のために日本から来た人が、まだ現地の情報にも疎く不慣れであるが故に、あるべきではない相手とあるべきではない商行為を行なってしまい、結果として損失・損害を被ってしまうという類の話である。
厄介なことにこれらの行為はいわゆる詐欺犯罪には当たらないケースが多い。事前に相談、交渉、合意もしていて契約書も締結されており、体裁的には通常のビジネスの要件が全て整っている それでも結果的に被害を受けた側から見れば、詐欺を受けたも同然だと感じざるを得ない話となる。

私は2008年にカンボジアで起業し、以来17年超にわたって現地で事業を経営してきた中で、この類の事例をいくつも見聞きしてきており、実際に私自身が被害を受けた当事者になったこともある。 それらの知見・体験を元に、この類の「詐欺的行為」を5つの類型に整理して共有しておきたい。


「犯罪にならない詐欺的行為」

繰り返しとなるが、特殊犯罪グループ等が組織的に働く詐欺はいわゆる刑法上の犯罪である。現在のカンボジアについて語る報道が視聴者に与えるイメージと、実際の現地滞在者が感じる実情には相当なズレがあり、その点は治安とリスクを扱った記事で別に整理した。

一方、ビジネス目的でカンボジアに来た日本人が遭遇するもののほとんどは、そこに当たらない。契約書がある。双方がサインしている。事前の説明もあった。法的には成立した取引であり、後になって騙された、犯罪だ、などの話にならない(法的に言えない)ケースがむしろ多い。

被害の実態を見ると、いくつかのパターンに分かれる。これから挙げる5つの呼び名は、すべて私の造語であり、学術的な分類でも業界で流通している用語でもない。カンボジアで自分が見てきたもの、そして自分が体験したものを自分なりに整理しただけのものだと思って読んでいただきたい。

  1. 刈り取り型コンサルエージェント
  2. サヤ抜き型業者
  3. 品質未達型
  4. タコ足破綻型
  5. 地面師型プロジェクト詐欺

前の2つは業者との取引、3つ目は施工や発注の現場、4つ目は不動産投資、5つ目は大型プロジェクト、と過去実際にあった事例が元ネタとなっている。


①刈り取り型コンサルエージェント|入り口だけ手配して放置する構造

刈り取り型というのは、事業や投資が始まったばかりの段階で、それらが実っていくことを待つことなく初期に取れるものを全て刈り取って終わらせる形を指す。

ちなみに弊社のカンボジア事業進出支援は、進出後の事業拡大に伴う様々な現場の実務やトラブル解決まで全て伴走する形をとっている。進出してくれた方が事業なり投資なりで成功し、大きくなればなるほど、お付き合いさせていただく弊社の収益も増える形のスキームを原則としている。 刈り取り型はその逆で、定型的な入り口の手配だけに特化して収益を獲得するモデルである。

具体的には進出コンサルティングや不動産仲介などのケースで、 事業を開始する段階ので現地法人設立、不動産取得ための視察から契約書締結までの段取り、など定型的な初期業務のみを行い、その取引相手のその後の事業経営や不動産管理にはタッチしない方式である。

ビジネスとしては極めて効率がいい。カンボジアに来たばかりの人がやろうとしている業態は様々でも、会社を登記するプロセスは基本的に同じだ。相手の業種業態に関わらずサービスを定型化できる。不動産も同様で、その物件が将来値上がりするかどうかというリスクはさておき、売買契約書の雛形はほぼ変わらない。そこだけ見て、あとは自己責任でお願いします、という形になる。この構造そのものについては、進出支援が手続き代行に偏る理由を別記事で詳しく書いた。

来たばかりの人は、当然ながら現地のことがよく分からない。仮に最初の窓口になるエージェントがカンボジアの事情やリスクをかなり正確に説明したとしても、正確であればあるほど受け手はキャパオーバーになる。全部を一瞬で理解するのはほぼ不可能である。加えて、進出支援を掲げていながら自分自身はそれほど事業をやっていない人だと、そもそも伝えきれていないケースもある。

刈り取り型の方々からすると、会社ができた時点がゴールだ。しかし進出した人にとっては、そこからがスタートである。

事業を1年から3年やっていると、いろいろなことが分かってくる。あの時これは分からなかった、あの時の説明にこれは入っていなかった、という不満が必ず溜まっていく。後から進出してきた人の事例も知ってしまう。長くいればいるほど「あの時、入り口を失敗した」という感覚が積み上がる。

カンボジアは狭い社会で、日本人社会に限ればなおさら狭い。こういう風評はどんどん広がる。結果として刈り取り型は評判が溜まりに溜まり、商売が続かなくなる。構造的に長期繁栄できないモデルなのだ。最近はあまり聞かなくなったが、2010年代にはこの類の話が長期在住者の世間話をだいぶ賑わせていた。


②サヤ抜き型業者|100万円の内装が400万円になる仕組み

刈り取り型が入り口で刈り取るのに対して、サヤ抜き型は途中で現れる。

たとえば小売でも飲食などの店舗型の商売を始めるとする。準備が進んで、店舗の内装設備を揃えようという段階に入る。カンボジアとはいえ首都プノンペンなら、日本の感覚でこれくらいの内装をするといくらかかるか、という相場観が頭にあるはずだ。ところが現地で分かっている人が頼むと、極端に安く済むことがある。

その差額を、来たばかりで相場が分からない日本人から抜く。

数字で言うとこうなる。日本で10坪から15坪、平米にして30平米から50平米ほどの小規模な店舗をやろうとすると、設備と内装を合わせた坪単価はおおむね40万円から80万円くらいだ。掛け算すれば400万円から1000万円近くになる。(出典元:店舗デザイン.COMの内装工事費用データ)

相場は時代によって変わるが、日本なら500万円から1000万円はかかるという話をされたうえで「カンボジアなら400万円で済みます」と言われれば、さすがカンボジアは安いと思う。実際の原価は100万円ほどしかかかっていない。そういうケースが過去に実在した。

この構造は2010年代前半の円高でさらに増幅された。円の史上最高値は2011年10月31日で、1ドル75円32銭。現在まで破られていない水準である。(出典元:ニッセイ基礎研究所の資料)本動画の収録時点では1ドル160円前後で推移していたので、当時は円の力が2倍以上あったことになる。(出典元:三井住友DSアセットマネジメントの市場レポート)日本円で見た感覚は今とそう変わらなくても、米ドル建てのローカル原価は非常に安かった。間でがっぽりサヤを抜いても、日本側からすれば「さすがカンボジア、それくらいで済むんだ」で終わってしまう。

この構造が成立する理由は単純で、サヤ抜き型の業者は日本語で話せるからだ。日本からの進出者は当然そちらに相談する。その先にいる現地のローカル業者との交渉も、原価も、日本側からはまったく見えない。

窓口である以上、ある程度きちんとした店舗を作らなければならないので、発注主の意見を聞いて監督くらいはする。ただし業者自身は大したことをせず、全部現地に流す。出来上がったクオリティについては「カンボジアクオリティですみません」で押し切られる。

サヤ抜き型も長続きしない点は刈り取り型と共通している。100万円のものに400万円を払い、しかも内装の出来が今ひとつだったとして、進出した本人にとってはそれが最初の経験だ。判断材料がない。ところが無事オープンして事業を続けていくと、現地のことがどんどん分かってくる。後から進出した人に話を聞けば、同じ規模の店舗がこれくらいで済んだと知る。そこで初めて「あれはやられたな」となり、その話がじわじわ広まっていく。抜きすぎれば信用がなくなり、結果的に長く商売ができない。


③品質未達型|契約書があっても詐欺で刑事告訴される

契約書で完成判定の権限を握っていた

これは私自身が初期にやられた型だ。

工場や店舗の内装のように、何かを作ってもらう契約を現地業者と結んだとしよう。日本人の感覚では、契約書にきちんと書いておけば安心できる。施工系でよくあるのは支払いの分割で、たとえば着手金として30%、途中経過が一定まで進んだ段階で30%、完成後に残りの40%、という組み方が多い。

そのうえで、完成の定義をどうするかという話になる。一定の品質を満たさないと困るのだから、最後にこれでOKだと判断するのはこちら側だ。そう契約に書いておいた。先進国の業者なら、完成の判断が完全に発注者側にあるという条項に対して、せめてこうしてくれ、ああしてくれと交渉が始まるはずだ。ところがカンボジアでは意外とみんなあっさりサインする。読んでいるのかなと思うような感じで、OKと言ってサインしてしまう。

こちらは安心した。仮に業者のハズレを引いたとしても、着手金と中間金は仕方がない、しかし最後の4割はこちらが判断しないと支払わないと明確に書いてある。揉めたところで負けるわけがない。そう思っていた。

民事のはずが刑事告訴になった

結果はそのとおりにならなかった。途中までは調子が良かったのに、最後がなかなか出来上がらない。こう言っているのにそうならない。そうして揉め始めた。契約書があるのだから、この品質に到達しない限り最後は払わないと言えるはずだった。

ここから先は私も法律の専門家ではないので、正確な知識を持っているとは言えない。そのうえで大づかみに書くと、裁判には民事と刑事がある。刑事は犯罪者と被害者の裁判だ。民事はビジネス上の言った言わない、債務不履行があったかどうかについて、業者の言い分と発注主の言い分が食い違うときに、裁判所が中立の立場でどちらが正しいかを判断する。今回の件は明らかに後者の話だった。

そこで訴えられた。しかも民事ではない。刑事告訴である。書類にはFraud、詐欺と書いてあった。理由は、外国人に騙された、というものだ。 人生で犯罪者として刑事告訴されることなど、それまでもそれからの一度もなかった。

明確な契約書があり、本来は債務不履行があったかどうかを争う民事の話である。それが「外国人が現地人を騙したのか騙していないのか」という話にすり替わる。裁判所に行っても契約書の話は出てこない。騙したのか騙していないのか、そしてどういう形で示談するのか。最終的にお金の話になった。その時は示談で処理している。

さらに悪いことに、その業者は普段から親しくしていた政府系の方からの紹介だった。当然その方に相談する。裁判所にも一緒に行ってくれた。示談の話がまとまってしばらく経った頃、何かのパーティーでその業者と当の紹介者が親しげに話しているのを見た。信義誠実というものが全くない。

繰り返しになるが、これは十数年前の話だ。当時のカンボジアは今よりもずっと新興国だったし、私自身も未熟だった。今のカンボジアで同じことが起こるとは思っていない。ただ、民事的にはこちらが正しいはずの契約書を作っているのに、まったく別の角度から詐欺扱いされてしまう構図そのものは、おそらく今も残っている。

契約書の効力が期待どおりに働かない場面は、業者との取引に限った話でもない。税務調査の現場では、契約書も鑑定書も銀行送金記録も揃えたうえで、当局が独自の査定額を通してきた事例がある。

だからローカル業者と安易に契約を結んで安心するのは危険だ。ある程度信頼できそうだとか、紹介されたからという理由で始めない。事前に現地で情報を集めておくことだ。日本人視点で言えば、完全な現地業者よりも、日本人がトップにいる会社や、日系の進出案件を数多く手がけていて日本側から見ても評判が確かめられる業者を選ぶことが非常に重要になる。


④タコ足破綻型|利回り保証と買取保証は「誰への与信」なのか

利回り保証と買取保証が付く理由

カンボジアで不動産、特に市内の高級コンドミニアムに投資する人は多い。物件によってはかなり魅力的なものもあるので、そこは自己責任で見極めていただきたい。

投資の狙いはインカムゲインとキャピタルゲインの2つだ。誰かが住めば家賃収入が入る。人気物件になれば価値が上がり、将来売却すれば売却益が得られる。成長している国で新しい建物がどんどん建っていく状況を目にすれば、そう考えるのは自然だろう。ちなみに現在のカンボジアの不動産市場はこの当時とはまるで様相が異なる。供給過剰と金融不況が重なっており、その現在地は経済の現況を整理した記事にまとめた。

実際には、完成後にすぐ入居者が現れない部屋がある。そこで開発会社は利回り保証という条項を付けてくる。入居者がいない期間でも、たとえば2年間、投資額の6%を保証しますという内容だ。投資家からすれば、まだ入居者がいなくてもインカムゲインが入ってくることになる。

さらに、その期間を過ぎても入居者がいない場合には買い取ります、という条項が加わる。しかも投資家が買った値段で。ここまで書いてあれば、テナントが入らなくても買い取ってもらえるのだから嬉しいと考える。

保証はデベロッパーへの与信行為である

結果として、買い取ってもらえなかった。これは事実として起きたことだ。

保証期間中は一応、利回りは支払われた。問題はその後だ。

投資家が買取請求に踏み切るまでには、いくつかの段階があった。投資して2年3年と経つうちに、投資した本人にも現地の事情が見えてくる。現地のサポート業者に任せきりで一度も来ない人もいるが、実際にカンボジアに足を運べば、どうもこの物件は住む人がいなさそうだと分かる。仮に入居者がついたところで、大きなキャピタルゲインは狙えそうにない。加えて投資した当時より円安が進んでいるので、投資時の簿価で買い取ってもらうだけでも円換算では利益が出る。だったら買い取ってもらおう、という判断になる。

そうして契約書の買取条項に基づいて請求したところ、デベロッパーに買い取る資金がないと言われた。

冷静に考えれば、利回り保証も買取保証も、デベロッパーに対する与信行為にほかならない。

日本の上場大手デベロッパーが保証すると言うのであれば、その会社に対する与信として成立する。投資家として安心もできるだろう。しかし相手が現地のデベロッパーとなると話が変わる。財務状況を確認できないケースがおそらく大半だろう。

カンボジアに株式市場ができてから15年ほど経つが、株式の上場企業は本稿執筆時点で12社ほどにとどまる。ほとんどの開発業者は財務状況を開示していない。どこまで儲かっているのか、まったく見えないのだ。(出典元:カンボジア証券取引所(Cambodia Securities Exchange:CSX)公式サイト)

私がこれをタコ足破綻型と呼んでいるのは、タコ足配当からの連想である。タコは腹が空くと自分の足を食べる習性がある。投資家から預かったお金を運用して儲かっていないのに、その預かったお金から配当を出す。自分の体を食べているのと同じだから、タコ足配当と言う。利回り保証も構造は変わらない。デベロッパーにそれなりの財務体力がなければ実行できないし、財務体力がないのなら利回り保証を付ける意味がない。

契約書の書き方にも問題があった。買い取りますとは書いてあるのに、どういう手続きで買い取るのか、どうやって請求する権利が保全され、買い取りが実行されるのかが詳細に書かれていない。保証期間後は請求に応じて買い取ります、という一文だけで終わっているケースがある。

この事例をより悪質だと私が考えているのは、その開発会社が買取請求に応じない裏で、別のプロジェクトに資金を投じていたからだ。当時どんどん進出してきていた中国企業向けの開発のほうが儲かると判断したのだろう。誤解のないように書いておくが、高級コンドミニアムから経済特区の造成へ開発の軸足を移すこと自体は、当時の市場の動きとして理解できる話であり、私はそれを批判していない。問題は、既存の買取義務を履行しないまま資金だけを別の案件に移したことにある。

私はたまたま別件でその開発案件を知っていたので、同じ会社だと気づいた。買取保証に応じてもらえずに騒いでいた投資家は日本人だけではなく、カンボジア人も含まれていた。その投資家に対して会社自身が、いまは別のプロジェクトが進んでいるからコンドミニアムの買取請求には応じられないと、しゃあしゃあと言い切ったという話まで残っている。ここまで来ると倫理の問題ですらない。

もちろん、こういう業者ばかりではない。まともな開発会社も数多くある。ただ魅力的な不動産案件が目の前に出てきたときに、開発会社が誰なのか、ローカル企業なのか外資なのか日系なのか、日系であれば日本での実績はどうか。そこを見たうえで、本当に安心できるところの物件に投資することを強くお勧めする。


⑤地面師型プロジェクト詐欺|MOUに法的拘束力はない

地面師型というのは、Netflixで話題になった日本のドラマ『地面師たち』から取った略称である。(出典元:Netflixの作品情報)地面師は、その土地の所有者でも何でもないのに所有権の書類を偽造して所有者になりすまし、売却してその代金を掠め取る。完全な犯罪だ。ここまでの4類型と違って、この5つ目は犯罪型である。

カンボジアで私が見てきた事例では、対象が土地ではなく大型プロジェクトだった。

多くの新興国と同じく、カンボジアにも地方開発や道路開発といったプロジェクトが常にあり、政府が大々的に発表しているものもいくつもある。そこに、あるプロジェクトの責任者だという人物が現れる。発注する業者を選ぶ立場にいる、と言う。

普通なら、そんな人が現れても簡単には信じない。ところがある程度まともな政府系のルートや、しっかりした筋から紹介されると話が変わる。この人がそのプロジェクトの業者選定の責任者なのだと説明され、日系企業に頼みたい、日本企業の品質を信じているから、という話をされる。それらしく聞こえてしまう。

協議を重ね、これだけの費用を払ってくれたら、成功報酬はいくらで、という条件が固まった。それなりのオフィスで覚書、つまりMOUを取り交わす。金銭の授受も発生する。あとは政府からの正式な任命を待つだけだった。その後、音沙汰がない。圧倒的な詐欺である。比較的大きなプロジェクトで何度か起こっていて、結局あれは誰だったのか分からないまま終わったケースもある。

私は法律の専門家ではないので、あくまで一般的な整理としての話だ。MOU(Memorandum of Understanding)は覚書と訳されるが、何の法的拘束力もない場合がある。日本の大手銀行とカンボジアの大手銀行がこういうことをやっていこうというMOUを取り交わしました、というニュースは時々流れる。ああいうものも、一緒に頑張っていこうという趣旨でサインしただけということが少なくない。

この流れは、後から見れば明らかに詐欺だ。ただ、よくよく見ると、そのプロジェクトが自分のところに来ると信じた側も、相手の素性の裏取りをほとんどしていない。あの人から紹介してもらった相手だから、という理由だけで話を進める。当人の名刺すら持っていなかった、という話も聞いた。

書面が法的にどういう効果を生むのか生まないのかについて、意外と疎い人がいる。立派な調印式をして握手をして、メディアに取り上げられたことで安心してしまう。しかし騙されたと言ってローカルの裁判所に持ち込んでも、おそらく取り合ってもらえない。紹介した人物が詐欺をしたと裏付ける証拠が何もないからだ。金銭の授受があったとしても、うっかり現金で渡していればレシートすら残らない。

面白おかしく地面師型と呼んではいるが、裏取りが難しい類型だ。これだけ大きなプロジェクトがなぜ自分のところに来ているのか、という自分の身の丈の話。そして、すごく偉い人から紹介された偉い人らしき相手が、本当は誰なのかという話。

逆に、分からない話から手を引く勇気が必要になる。


カンボジアで詐欺リスクを避けるための対策|現地情報収集の努力を怠らない

5つの類型に共通しているのは、来たばかりで情報を持たない側と、現地の実情を知っている側との非対称性である。相手が悪意を持っているかどうかは、実のところ本質ではない。

ではなぜ、その非対称性がここまで埋まらないのか。理由は3つに分解できる。

1つ目は、来たばかりの人は文字どおり何も分からないという当たり前の事実だ。2つ目は、仮に最初の窓口が正確に説明したとしても、正確であればあるほど受け手はキャパオーバーになり、一度で理解しきれないこと。3つ目は、進出支援を掲げる側自身がそれほど事業をやっていない場合、そもそも伝えるべき中身を持っていないことである。この3つが重なるので、悪意の有無に関わらず、判断材料を持たないまま意思決定する構図ができあがる。

対策は結局、現地情報収集の努力を怠らないことに尽きる。私が実際にやるべきだと考えているのは、次の4つだ。

  1. 自分の足で回る時間を作る
    最初に来るときに誰かの案内で来ることや、コンサルのツアーで来ること自体は問題ない。入り口はそれでいい。ただし何か事を始める前には、極力自分の足で回るべきだ。所詮プノンペンは狭い街である。2週間でも3週間でも自分で歩けば、案内されているだけでは見えないものが見えてくる。
  2. 相談できる相手を複数持つ
    いろいろ回って現地の友人や知人を作り、進出を軽く考えているのですがと相談できる相手を複数持つ。現地の人もいきなり会った相手には話せないことが多いが、じわじわ仲良くなっていくほどいろいろなことを教えてくれる。
  3. 業者は日本側から評判を確かめられるところを選ぶ
    日本人がトップにいる会社か、日系の進出案件を数多く手がけていて日本側から見ても評判が確かめられる会社を選ぶ。そのうえで、その相手が現地で自分自身の事業をやってきた人なのかどうかを見る。業者に聞くべき5つの質問は別記事にまとめた。
  4. 不動産は物件より先に開発会社を見る
    ローカルなのか外資なのか日系なのか、日本での実績はどうか。利回り保証や買取保証が付いている場合は、それが誰への与信になるのかを必ず確認する。

そして、話が大きくなればなるほど自分の身の丈を疑う。裏が取れない話、相手が誰なのか分からない話からは手を引く。それが結局、この5つの類型のいずれにも引っかからない最も確実な方法である。


自社の進出で、どこに詐欺リスクが集中するかを整理したいなら

カンボジアで日本人が遭う詐欺的行為は、犯罪として立件されるものよりも、契約も合意も整ったうえで成立してしまうものの方が多い。5つの類型に共通しているのは、情報を持たない側と持っている側の非対称性である。

ただし、どの類型のリスクが自社に効いてくるかは、業種と進出の形態でまったく変わる。店舗型なら発注フェーズのサヤ抜きが最大の論点になるし、投資目的ならデベロッパーの与信をどう見るかが中心になる。一般論として5つの型を知っていることと、自社の場合にどこが危ないかを見通すことは別の作業だ。

弊社の進出相談パッケージでは、代表・髙との60分オンラインコンサルと進出支援レポートで、これから進めようとしている案件について、契約の組み方、依頼先の見極め方、どこで裏を取るべきかを具体的に整理する。私は投資を勧める立場でも、進出を必ずやるべきだと言う立場でもない。進めてよさそうなら進めればいいし、具合が悪そうなら一度立ち止まればいい。その判断の質を上げるための材料を渡すのが役割だと思っている。

入り口を間違えると、後から取り返すのに何倍もの時間がかかってしまう。始める前に一度、整理しておくことをお勧めする。


本記事は、Cambodia Business SupportのYouTubeチャンネルで公開したインタビュー動画の内容をもとに、加筆・再構成したものです。

為替レート・工事単価・上場企業数等の数値は収録時点のものであり、最新の状況とは異なる場合があります。投資に関する判断はご自身の責任で行ってください。

自社の場合、どこに詐欺リスクが集中するのか

カンボジアで日本人が遭う詐欺的行為は、犯罪として立件されるものよりも、契約も合意も整ったうえで成立してしまうものの方が多い。5つの類型に共通しているのは、情報を持たない側と持っている側の非対称性である。

ただし、どの類型のリスクが効いてくるかは、業種と進出の形態でまったく変わる。店舗型なら発注フェーズのサヤ抜きが最大の論点になるし、投資目的ならデベロッパーの与信をどう見るかが中心になる。一般論として5つの型を知っていることと、自社の場合にどこが危ないかを見通すことは別の作業だ。

弊社の60分コンサルでは、これから進めようとしている案件について、契約の組み方、依頼先の見極め方、どこで裏を取るべきかを具体的に整理する。入り口を間違えると、後から取り返すのに何倍もの時間がかかってしまう。

私は投資を勧める立場でも、進出を必ずやるべきだと言う立場でもない。進めてよさそうなら進めればいいし、具合が悪そうなら一度立ち止まればいい。その判断の質を上げるための材料を渡すのが役割だと思っている。

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観光ビザでも大丈夫?|カンボジアでの現地銀行口座開設リアル実務【2026年最新】
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2026.05.30
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髙 虎男
2008年カンボジア企業 / 公認会計士
アドバイスだけの専門家ではありません。カンボジアで17年間、自分の資金で事業を立ち上げ、従業員を雇い、行政の理不尽とも戦ってきました。その全経験をもとに、日系企業の進出を支援しています。
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動画レポート一覧 26本
観光ビザでも大丈夫?|カンボジアでの現地銀行口座開設リアル実務【2026年最新】
観光ビザでも大丈夫?|カンボジアでの現地銀行口座開設リアル実務【2026年最新】
カンボジアの経済活動が主に米ドル中心に行われ、外国人でも米ドルの現地銀行口座を開設できることは、海外で事業や投資を行う人々にとってカンボジアの大きな魅力の一つとなっている。 実際に数多くの顧客やパートナーの現地銀行口座開設をサポートしてきた筆者が、実際に数名の日本人パートナーの銀行口座開設を手伝った動画の内容から、カンボジアで銀行口座開設するにあたっての要点とリアルな実務手順を整理する。
2026.09.28
カンボジア長期滞在、忘れがちな”年次タスク”総まとめ|厳格化するビザ・ワークパーミット・クオータ等の諸制度について詳細解説!
カンボジア長期滞在、忘れがちな”年次タスク”総まとめ|厳格化するビザ・ワークパーミット・クオータ等の諸制度について詳細解説!
カンボジアで長期滞在しビジネスを続けていると、毎月発生する役所手続き等の月次タスクを忘れることはほぼないが、年に1、2回おこなう必要がある”年次タスク”はうっかり忘れがちとなる。 今回は、ビザの更新月から始めて、1〜3月しか申請できないワークパーミット、入国から90日以内という制度上矛盾したルール、大家側に登録義務がある外国人居住登録FPCS、9〜11月のクオータ申請、労働省への年2回の自主申告SICMS、そしてACARへの財務諸表提出まで、年次でやるべきことを順に整理した。 これらは独立した手続きではない。クオータを取らなければワークパーミットは出ず、ワークパーミットがなければビザは延長できない。労働省と内務省のシステム連携が進んだ今、その連鎖が実際に効き始めている。銀行口座の凍結を防ぐ小技も最後に紹介する。
2026.09.10
「静かな港町」がなぜ「詐欺集団の巣窟」に?|光と影が交錯するシアヌークビル15年史
「静かな港町」がなぜ「詐欺集団の巣窟」に?|光と影が交錯するシアヌークビル15年史
2025年、カンボジア南西部の港湾都市シアヌークビルは詐欺犯罪集団の一大拠点として悪名が日本のみならず世界中に広がった。 一方時を遡ること15年前、この街はまだ静かで寂れた港町であった。シアヌークビル離島の観光ブランド化と本土への中国巨大資本の流入が同時に進んだ激動の2010年代、オンラインカジノ禁止令とコロナ禍が与えた大きな影響から、その狂乱の中で地道に続いた日本のODAと港湾株式25%を巡る中国勢と日本政府の攻防まで、2026年現在のシアヌークビルに至るまでの15年史を振り返る。
2026.08.12
カンボジアの銀行はなぜ潰れないのか|金融大不況においても好業績を維持できる3つの理由
カンボジアの銀行はなぜ潰れないのか|金融大不況においても好業績を維持できる3つの理由
日本におけるバブル崩壊後の平成金融危機(の最悪期)とほぼ同水準である不良債権比率8.9%に達する大金融不況下にあるカンボジアで、なぜ銀行は潰れないのか。その構造要因となるカンボジア特有の事情から、預金保護なき国での銀行選びについて、カンボジア現地17年超の公認会計士が解説。
2026.07.24
日本からカンボジアへのフライト最適解2026|コスト、飛行時間から乗り継ぎ体感まで主要ルート徹底比較
日本からカンボジアへのフライト最適解2026|コスト、飛行時間から乗り継ぎ体感まで主要ルート徹底比較
日本からカンボジアへの”航空業界の定義上”の直行便である中国福州経由便の実情から、バンコク・ホーチミン・インチョン・シンガポール経由の王道4ルート、玄人向け陸路まで、中東情勢により燃油サーチャージが高騰する2026年中盤時点で使える最適ルートを日本カンボジア往復歴20年超の実体験も踏まえて比較する。
2026.07.24
カンボジア名誉領事の3.7億円申告漏れ事件|脱税スキームの手口と「偉い人」の見極め方
カンボジア名誉領事の3.7億円申告漏れ事件|脱税スキームの手口と「偉い人」の見極め方
在仙台カンボジア名誉領事の約3.7億円申告漏れ事件。手口は古典的な架空経費計上であったが、「名誉領事」という肩書きが与える特権イメージを悪用した外交問題にも発展しうる悪質なケースであった。名誉領事とはそもそも何か?、「税務調査は及ばない」というデタラメはなぜ信頼性を帯びたのか?、制度上の「外交特権」と、大使と領事との違いとは?、カンボジアでの「偉い人」の役立ち度合いは? 現地で事業経緯17年超の公認会計士が実体験を元に解説する。
2026.07.10
海外進出するならどの国か|カンボジアを他国と比較して見える進出判断の軸【2026】
海外進出するならどの国か|カンボジアを他国と比較して見える進出判断の軸【2026】
カンボジア進出は「あり」か。経済規模ならベトナム、節税だけならシンガポール。それでもカンボジアには米ドル運用・金融インフラ・外資規制の少なさという強みがある。17年現地で事業を営む公認会計士が、他国と比べた進出の判断軸を整理する。
2026.07.02
カンボジア現地財閥の実態と日系企業との関係は?|プリンスグループ事件の顛末から見えてくる現地のリアルな実情
カンボジア現地財閥の実態と日系企業との関係は?|プリンスグループ事件の顛末から見えてくる現地のリアルな実情
米国による2兆円規模のビットコイン資産凍結で世界を驚かせたプリンスグループ事件。現地で事業経営17年超の日本公認会計士が、プリンスグループ爆誕から崩壊までの15年の歴史を振り返りつつ、プリンスグループが現地ではどう見えていたのか、カンボジアの財閥がなぜ実態を掴めないのか、日系大企業と現地財閥の関係と距離感は、などについて現地のリアルな実情と共にに解説する。
2026.05.30